調べ学習や教科学習にICTを効果的に活用し、
子どもの情報活用能力を高める

2019年 11月 28日(木)

栃木県 那須塩原市立豊浦小学校

全教師が様々な授業でICTを活用する場面を設定

那須塩原市立豊浦小学校は、全学年でICTを活用した授業づくりに力を入れている。
そのきっかけは、2014年度に同市教育委員会の「ICTを活用した新たな学びの推進事業」の指定を受け、タブレット端末や電子黒板といったICT機器が整備されたことだ。

現在は、全教師が様々な教科や総合的な学習の時間(以下、総合学習)の授業などで、ICTを活用する場面を積極的に設けている。

19年9月には、そうした指導の成果検証の一環として、5年生(以下、15年度入学生)が「Pプラス」をモニター受検。「物事の分析」などから成る「プログラミング」領域や、「情報の表現」「情報の伝達」などから成る「情報活用」領域、1分間にタイピングできる文字数などにおいて、全国のモニター校の中でも屈指の好成績を収めた。では、具体的にどのような取り組みがP プラスの結果に結びついているのだろうか。15年度入学生を中心に見ていく。

調べ学習を通して、情報を収集・整理し、発信する練習を積ませる

3〜6年生の総合学習の授業では、子どもが4〜5人1組のグループになってタブレットやパソコンを活用し、地域や福祉、環境などをテーマにした調べ学習に取り組む。

同校におけるICT活用の推進者の1人で、15年度入学生を3・4年と担任した渡邊英樹先生は、調べ学習を通して、子どもは着実に情報収集能力を伸ばしていったと話す。
「3年生の前半では、インターネットで調べ学習をしていくなかでインターネットによる情報収集のノウハウを身に付けていったようです。

実際、4年生になると、大半の子どもが『得たい情報は何か』を考え、適切な検索ワードを入力できるようになりました」いずれの学年でも、調べた内容は子どもたち自身がプレゼンテーションソフトなどを用いてまとめ、年度末の総合的な学習の時間(総合学習)の発表会で発表する。

そうした各学年に共通する活動に加え、「調べた内容をすべて発表するのではなく、伝えたい情報だけに絞る」「グラフや表などにまとめて示す」など、他者に分かりやすいプレゼンテーションを行うためのポイントについて指導し発表会までの間に、クラス内での発表を行った。
「何事においても、まずは型を習得することが大切です。そこで、プレゼンテーションを実践する場面を多く設けたところ、他のグループの発表に刺激を受け、自分たちの発表をより工夫するグループが目立ちました。インプットした情報を他者に伝わるように整理し、アウトプットする練習になったと考えています」(渡邊先生)

互いの考え方の違いを知り、生き生きと学び合う子どもたち

教科学習では、子どもの考えや答えをクラス全体で共有する場面を中心に、ICTを取り入れている。
15年度入学生は5年生では、算数の授業でタブレット端末を活用し、自分とクラスメートの考えを比較して共通点や相違点を見つけさせる活動を行った。

5年生担任の金子舞先生は述べる。「正解か不正解かだけではなく、他に解き方はないのか、あったとすればどの解き方が効率的かを意識することで、子どもの学びはより深まります。そこで、他の子どもに参考にしてほしい解き方があれば必ず取り上げ、自分の解き方と比べさせています」子ども同士が互いに考えや答えを発表する場面は、1年生の授業から積極的に設けている。

例えば、1年生の図工の授業では、教師が子どもの作った粘土細工などをタブレット端末で撮影し、それをクラス全体に示しながら、何を作ったのかを当てさせるゲームを行う。
「発表を繰り返す中で、子どもが間違いを恐れずに考えを述べたり、クラスメートが間違っても冷やかさなかったりする雰囲気がクラスに醸成されていきます。低学年からそうした雰囲気づくりを大切にしていることが、中・高学年次におけるICTを活用した授業の充実につながっていると感じます」(金子先生)

また、15年度入学生は、3年生の授業でローマ字を学んだが、ローマ字の学習の中では、パソコン教室でタイピングの練習に取り組ませたり、タイピングの検定を実施したりした。
「総合学習では、学年が上がるにつれて発表資料などをICTを活用して作成する場面が増え、タイピングのスキルがより求められるようになります。教科の授業でローマ字を学ぶことは、タイピングへの意識づけを図るよい機会になると考えました。実際、どの子どもも、タイピングや検定に前向きに取り組んでいました」(渡邊先生)

Pプラスを活用し、方針を客観的に把握

同校におけるICTを活用した授業づくりは、大きな成果を上げている。それが、Pプラスの「プログラミング」「情報活用」領域のスコアなどに表れていることは、前述した通りだ。

一方、「情報モラル・セキュリティ」領域については、さらにスコアを高められるよう、指導に力を入れていく。「新学習指導要領でより重視されている『情報活用能力』とはどのような資質・能力なのか、漠然としていました。

しかし、Pプラスの問題を見ると、『情報活用能力』のイメージが具体化し、指導の方向性が見えてきました」(金子先生)今後は、取組をより充実させることを目指すと、5年生担任の木村巧先生は語る。
「指導改善に終わりはなく、子どもの実態に応じて続けていく必要があります。今後も、子どもの資質・能力ベースの指導を大切にするという本校の伝統を継承し、発展させていきたいと考えています」

金子舞先生 / 渡邊英樹先生 / 木村巧先生