君の得意は 情報デザイン

情報社会の中でデジタル機器を効果的に活用し,コミュニケーションや問題解決のために情報を適切に整理,分析,表現,発信するための力です。多様化する情報を,適切に取捨選択できる考察力も重要です。

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専修大学 ネットワーク情報学部 教授 上平崇人(かみひらたかひと)先生

専修大学 
ネットワーク情報学部 教授

上平崇人(かみひらたかひと)先生

>プロフィール

筑波大学大学院芸術研究科修了。約3年のデザイナー経験の後,教育者の道へ。コペンハーゲンIT大学の客員研究員などを経て現職。コロナ禍を逆手にとったユニークな学習課題の数々が,学生たちから好評を得ている。

私たちの身の周りには,さまざまな情報があふれています。
押し寄せる大量の情報から,必要なものをどう選ぶか?
得た情報を,どうやって人に伝わりやすく表現・発信するか?
これからの“超”情報化社会の中で,
情報を味方につけて生きる方法とは――。
「情報デザイン」に,そのヒントが隠されているかもしれません!

※記事の内容は,2020年6月時点のものです。現在異なっている情報もありますので,ご注意ください。

contents
  • 01.日々,変わり続ける「情報デザイン」の世界
  • 02.“当事者意識”をもち,情報を味方につけよう!
  • 03.“当事者”はいつも,キミだ!
  • 04.上平先生からキミにアドバイス!
  • --.からむ・コラム

日々,変わり続ける「情報デザイン」の世界

先生

「情報デザイン」は
日常の中にある

「情報デザイン」というと,みなさんは何を思い浮かべますか?

日常生活で使うSNSや,ネット動画,学校の掲示板。
情報を選んで受け取ったり,人に何かを伝えたりする行為はすべて,
「情報デザイン」の一環です。

そう考えると,今の社会では,だれもが知らず知らずのうちに
情報の「デザイン」に関わっていると言えます。

インターネットの中では,すべての人が表現者。
あなたももちろん,例外ではないでしょう。

先生

民主化されてきた
“情報”と“デザイン”

だれもが情報を発信でき,表現できる環境。
それは,1990年代にインターネットが世の中に
普及するまで,まったく想像もできなかった世界のあり方でした。

昔は個人が意見を広く発信したり,何かを創造したりするのは難しく,
●情報=新聞・テレビなどのメディアから
●デザイン=デザイナー・建築家から
それぞれ,人々へ一方的に受け渡されるものだったからです。

時代が変わるにつれて,情報やデザインが多くの人に
開かれていった過程。これを私たち研究者は,宗教や政治の形式の変化になぞらえて, メディアやデザインの「民主化」と呼んでいます。

つまり,デザインは,“プロ”がやってくれるのではなく,
みんなが自分でやることと捉えられるようになったのです。

先生

新型コロナウイルスの影響で,
さらなる変化も

民主化以降も「情報デザイン」のあり方は刻々と変化しています。
まず,2010年代のスマートフォンの普及によって,
情報伝達の方法がさらに進化したこと。

地球規模のネットワークが手のひらサイズの端末を
経由することによって,だれもが,いつでも手軽に情報を受け取り,
発信しやすいものになりました。

そして今,新型コロナウイルスの世界的な流行も,
まさに変化のきっかけの一つ。
“会って話すこと”の代わりに“オンライン”の可能性が模索され始め,
コミュニケーションのあり方が大きく揺らいでいます

日々,変わりゆく情報世界。
その変化に対応するために,私たちはどうしたらいいのでしょうか?

“02.当事者意識”をもち,情報を味方につけよう!

先生

“超”情報化社会で
大切にしたい視点とは?

変わりゆく“超”情報化社会を迷わずに生きるには,
情報に振り回されないこと。
大切なのは,自分に本当に必要な情報はどれかを丹念により分け,
整理できる能力
です。

そして間違っていることに気づいたら,
その原因を真摯に受け止め,考え方を修正することです。

この力を育てるためには,「自分には関係ない」とけっして思わず,
できるだけ “当事者”の視点をもつことが重要だと私は考えています。

たとえば,日常の中で,
「このツールの,ここが使いにくい」
「あの人,もしかして困っているのかな?」
といった問題を見つけて,人に頼まれなくても自分から工夫し,提案してみる。

「デザイン」とは“カッコいいものをつくる”ことではありません。
物事に新たな価値を生み出し,社会をよりよく変えていくのも,
デザインの大きな役割
なんです。

先生

オンラインの世界で生きる
“当事者意識”

現に,たとえば現在のコロナ禍で注目されているオンラインの
コミュニケーションサービスも,開発する側がやむにやまれぬ
切実な課題や熱い思いを抱える“当事者”であるほど,
最終的に選ばれるものになるツールが多いように思います。

まず,学校のオンライン授業でも使われる
「Zoom」は,
元は開発者のエリック・ヤンさんが恋人との
遠距離恋愛のためにつくったビデオ通話ツール。
そのため機能がシンプルで,
他の会議ツールほどの堅苦しさがないのが魅力になっています。

そして,私がいま注目している,
アメリカの「Discord(ディスコード)」
というチャットツールは,ゲーム好きの開発者たちが,
ゲームを配信して楽しむために始めたサービス。

感覚的に操作ができたり,参加者がワイワイ意見を言い合えたりする
“身内”感
があります。

利用者が公式掲示板に書き込んだ意見を,
企業側がリアルタイムでサービスに取り入れていく柔軟さもすごい!

▲上平先生のDiscordメイン画面

▲上平先生のDiscordメイン画面

先生

同じ目的でも,
使い心地がぜんぜん違う!

2つとも,若者たちが“自分たち自身が欲しいもの” を
自分たちで作り始めた小さな会社でした。
頼まれたわけではないのです。

この2つを他の巨大サービス会社のツール
(たとえばMicrosoft TeamsやGoogle Meet)と比較すると,
同じ「会話する」ためのツールでありながら,
サービスの作り手たちの思いが強く現れているのもおもしろいですね。

使う側としても目的に応じて使い分けしやすく,私の場合は,
●「Discord」・・・授業中にあちこちの小部屋に自分で移動しやすく,
非同期のやりとりにもつかえるので,授業用に
●「Zoom」・・・・・手軽に使えるため,外部との連絡用に
と分けて活用しています。

“03.当事者”はいつも,キミだ!

先生

“当事者”であるために,
まずは行動

では,実際に“当事者意識”を自分の中で育むためには,何をしたらいいのか?

具体的な方法としておすすめなのが,
自分の手で何かを作ってみることです。
ゲームを作るとか,野菜を育てるとか,自分のための道具をつくる
とか,あなたの身近なテーマから始めてみましょう。

行動することで,目の前にある“課題”が,よりはっきりと
見えるようになります。
課題を捉え「どう変えていこうか?」と試行錯誤する。

そのプロセスの中で,情報のチカラに気づけば,
情報のデザインにつながっていきます。

そして,“当事者意識”と行動力から「情報デザイン」力が磨かれていくはずです。

先生

「情報デザイン」を
楽しもう

私の大学の授業でも,学生の「情報デザイン」力を高めるため,
クラスメイト同士でオンライントーク番組制作
家にあるものを再利用してオリジナルアニメーション装置を製作
課題図書で得た知識を元に,実際に課題を抱える人と対話して
それをレポートする

といった,
“実際に自分自身でやって,みて,わかること”
重視した課題を出しています。

学生たちは「難しい」と言いながらも,
けっこう楽しんで取り組んでいるようですよ。

正解がない課題に取り組むのは,最初はハードルの高いもの。
でも,考え,手を動かしていると想像力が広がっていきます。
やらなきゃいけない義務感を超えて,自分の内側から
「うれしい」「楽しい」という気持ちが湧き上がってきたら,
成長のチャンス!

そうして鍛えた「情報デザイン」力は,普遍的なものとして,
みなさんの将来に役立つ力になってくれるでしょう。

たとえ困難な状況でも,自分ができることを探し,
ピンチをチャンスに変える。これからの世界では,
「情報デザイン」の力が大きな武器になりそう!

上平先生からキミにアドバイス!

先生

「情報デザイン」を学ぶのに,場所や立場は関係ありません。

私はよく,自分の子どもの思いがけない行動に“ハッ”とし,
アイディアが浮かぶことがあります。
また,大学の講義中に学生から出される意見や反応から,
学ぶことも多いです。

日常にこそ,見過ごされがちな裂け目があちこちに広がっており,
学びがある。

固定観念を外し,そう意識を変えることで,
周りに新鮮な驚きが転がっていると気づくでしょう。

「情報デザイン」への扉は,そこから開かれるのかもしれません。

からむ・コラム

情報デザイン×データサイエンス
データ分析の世界でも生きるデザインの力
 
私が過去に受け持った学生の中に,プロサッカーチームの分析者の道に進み,データ分析の面からチームの戦略を支える人物がいます。

彼いわく,戦略につながるデータを提案するためには,そのデータを監督たちが理解しやすくするためのデザインが欠かせないのだとか!
意外な業種でも,「情報デザイン」の力を生かせるといういい例ですね。

彼いわく,戦略につながるデータを提案するためには,そのデータを監督たちが理解しやすくするためのデザインが欠かせないのだとか!
意外な業種でも,「情報デザイン」の力を生かせるといういい例ですね。

専修大学 ネットワーク情報学部 教授

かみひらたかひと先生

筑波大学大学院芸術研究科修了。約3年のデザイナー経験の後,教育者の道へ。コペンハーゲンIT大学の客員研究員などを経て現職。コロナ禍を逆手にとったユニークな学習課題の数々が,学生たちから好評を得ている。