君の得意は データサイエンス

情報社会の中で,データを目的に合わせて収集し,分析・活用できる力のことです。数学や統計学の知識に加え,解決すべき課題や目的を見抜くための,鋭い観察眼も必要になります。

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この分野で活躍する先輩の話を聞いてみよう!
データ活用によってゑびやに生まれた好循環を,飲食業界全体に広げたい!

株式会社EBILAB データサイエンティスト 有限会社ゑびや経営企画室/おもてなし責任者 秋吉(あきよし)しのぶさん

株式会社EBI LAB 
データサイエンティスト
有限会社ゑびや 
経営企画室/おもてなし責任者

秋吉(あきよし)しのぶさん

>プロフィール

静岡県の温泉旅館で仲居として勤務後,三重県伊勢市の「ゑびや」へ。接客業の傍ら,パソコンを触り始めて約半年で来客予測システムの開発に携わる。福岡大学人文学部で学び,英語・中国語・韓国語が得意な一面も。

未来にどんなことが起こるのか,知りたいと思ったことがありますか? 
データサイエンスの力を使えば,その希望が現実に近づくかもしれません。
来客データを蓄積・解析して「お店をもっとよくしたい!」という
希望をかなえた,「ゑびや」の来客予測システム。
そして,このサービスの開発に携わったのが,
パソコン歴約半年だった秋吉さんというから驚きです――。

※記事の内容は,2020年6月時点のものです。現在異なっている情報もありますので,ご注意ください。

contents
  • 01.データサイエンスが,創業100年の老舗食堂を変えた!
  • 02.“パソコン初心者”からデータサイエンティストへ
  • 03.目標は大きく,飲食業界の働き方改革を!
  • 04.秋吉さんからキミにアドバイス!
  • --.からむ・コラム

データサイエンスが,創業100年の老舗食堂を変えた!

先生

データを活用した,
老舗食堂「ゑびや」の挑戦

「ゑびや」は,伊勢神宮の門前町で
1912年(大正元年)から続く老舗食堂です。

ゑびや外観

ゑびや内観

その食堂に, IT化の波がやってきたのは2012年。
以前はベテラン従業員の経験や“カン”に頼っていたお店の運営に,
デジタル機器を取り入れて効率化しよう,という
社長の経営転換がきっかけでした。

そこから段階を踏んで
毎日の来客数/気温/メニューの注文数/売り上げ
といった,お店に関係するあらゆる数字をデータとして蓄積。

明日,お店に何人のお客さまがいらっしゃるか?
どのメニューの注文がいくつ入りそうか?

といった数値を細かく予想できる,ゑびや独自の来客予測システム
「TOUCH POINT BI 」を,数年かけて開発していった
んです。

※タッチ・ポイント・ビーアイ
過去の店舗情報を天気予報などのビッグデータと組み合わせ,翌日の来客予測数・メニューの注文数を約96%の確率で予測したり,POSレジを含むデータを自動収集し可視化するサービス。2018年5月より全国販売開始。

先生

来客予測数の的中率,
なんと約96%に!

そのプロジェクトに私が関わり始めたのは,
リリース間近の2018年のこと。

データサイエンティストとして,
「業務の効率化にはどのデータが必要か?」
「AIにどんな方法でデータを解析させるか?」

といった,データの取捨選択の判断をする役目ですね。

飲食店の運営に必要なデータを絞り込み,
解析を繰り返すほどに,AIの来客予測数の正確さが増していく。
近くでそれを体感できるのは,とても楽しいことでした。

そして,データの活用によって,
お店にたくさんの“嬉しいこと”が生まれたんです。

先生

データサイエンスで,
お店にたくさんの笑顔が

まず,社会問題にもなっている,食品の廃棄ロスが劇的に改善。

中でもお米は,導入前と導入後で捨てる量が
約70パーセント減って
1日あたり: 約7升→ 約2升になり,
無駄なコストの削減にもつながりました。

1升=約1.5kg

また,どのメニューの注文がいくつ入るかわかるので,
事前の仕込みの準備もバッチリ。
忙しい時間帯でも,お客さまを待たせずに済みます。

そして,翌日の来客予測数に合わせてシフトを調整し,
バランスのよい人員配置が可能に。
売り上げを維持しながら,
スタッフたちの休日を増やすこともできました。

TouchPointBIの操作画面

▲TOUCH POINT BIの操作画面

みんなが,自分の時間を大切にしながら働ける。
お客さまと従業員の,両方が笑顔になれる。
こんないいサイクルはありませんよね。

“パソコン初心者”からデータサイエンティストへ

先生

パソコンとの
衝撃の出会い!

今でこそ,ゑびやのデータサイエンティストを務めていますが,
「TOUCH POINT BI」に携わる半年ほどの前の私は,
実はパソコンが全くのニガテ。

「パソコンの電源ボタンってどこにあるの?」
「“ブラウザ”って,何のこと!?」
ほぼ初心者のレベルでした。

そんな私がパソコンのおもしろさに目覚めたのは,
ゑびやに入ってから2年後の2018年春,
社長に連れられて参加した,とあるデジタル・ IT系の展示会です。

画面に文字を打ち込むだけで,
さまざまな課題がすごいスピードで処理され,解決されてゆく。
「こんな世界があるなんて!」と,衝撃を受けたんです。

先生

寝る間も惜しんで
“パソコンざんまい”の日々

翌週,すぐにパソコンを買いにお店へ走り,
そこからは朝から晩までパソコン三昧。

お店での接客の仕事が終わった途端,パソコンの前に猛ダッシュ。
休みの日も寝る間を惜しんでラボにこもり
「Machine Learning Studio」などの
学習用アプリケーションに夢中になりました。
その変貌ぶりに,会社の人たちも驚いていたほどです。

自分でも,なぜそれほど集中できたのか不思議ですが,
理由は,大きく二つあると思います。

※Machine Learning Studio
(マシンラーニングスタジオ)
キャンバスに要素をドラッグ&ドロップするだけで,データモデルを構築でき,感覚的に機械学習を進められるMicrosoft社の学習サービス。

先生

データが
未来を左右する

一つは,直感的に操作できる学習ツールを選んで,
楽しみながらデジタル学習ができたから。

そしてもう一つは,お店に蓄積された情報を
実際に解析ツールにかけてみる中で,データが私たちの未来を左右する,
とても大切な要素なんだと気づいた
からです。

「データを活用すれば,いろんな課題を解決できそう!」
未来に希望が見えたんですね。

目標は大きく,飲食業界の働き方改革を!

先生

データサイエンスで,
飲食業界をよくしたい!

私はもともと接客業が大好きで,
ゑびやに入る前からずっと接客業に携わり続けてきました。

でも,飲食業界って,接客以外の事務作業が
意外とたくさんあるんですよね。

仕事をしながら,ずっと,
「この作業が減れば,お客さまをもっと丁寧におもてなしできるのに」
「お店の人たちも,もっとラクになるのに」
といった課題意識をもち続けてきました。

それが,ゑびやでデータサイエンスに関わり始めたら,
“多くの面倒ごとは機械によって解決できる”とわかりました。
長年の課題が,目標につながった瞬間でした。

先生

効率化で生まれる,
よりよい世界

「TOUCH POINT BI」をリリースしてからは,
ゑびや以外のお店のデータ解析にも携わり,
それぞれの悩みに合わせたAIの活用方法を提案しています。

「ゑびやの事例を他のお店でも広く活用すれば,
きっと飲食業界全体の労働環境を改善できる!」
今ではそう思っています。

データ活用によってゑびやに生まれたこの好循環を,
業界全体に広げたい!

そのために,これからもデータサイエンティストとして,
全国の飲食店のAI化をサポートし続けていくつもりです。

TOUCH POINT BI

データを味方につけて未来を予測し,
身の回り,そして業界全体をよくしていく。
データサイエンスの可能性は,無限大!

秋吉さんからキミにアドバイス!

先生

データは「数字」ですが,
それを読み解くのに文理は関係ありません。
大学までずっと文系で,
数学が大のニガテだった私が言うのですから,間違いありません!

大切なのは,解決したい課題を見つけ,そこに向かって進むこと。
好奇心を抑えずに,まずは身近な課題を解決し,
データサイエンスを楽しんでみてください。

からむ・コラム

データサイエンス×コンピューティング
プログラミングは文系こそ楽しめる
もともと文系の私からすると,プログラミングは「間違いを見つけやすい」のがおもしろい!

たとえば語学ですと,文法が間違っていてもある程度は話が通じますね。

でも,プログラムは1文字でも間違っていると,エラーで返ってきます!曖昧にできない,わかりやすさが新鮮なんです。
コラム画像

でも,プログラムは1文字でも間違っていると,エラーで返ってきます!曖昧にできない,わかりやすさが新鮮なんです。

株式会社EBILAB データサイエンティスト
有限会社ゑびや 経営企画室/おもてなし責任者

あきよししのぶさん

静岡県の温泉旅館で仲居として勤務後,三重県伊勢市の「ゑびや」へ。接客業の傍ら,パソコンを触り始めて約半年で来客予測システムの開発に携わる。福岡大学人文学部で学び,英語・中国語・韓国語が得意な一面も。